さかのぼって制作活動 №2

今回はこの土器、井戸尻で一番有名な土器、曽利遺跡出土の「水煙渦巻き文深鉢」見る者も、作る者も魅了する土器です。もちろん、気合が入らないとできませんが‥‥。今年はレプリカをお借りして2人のお仲間が作っていました。

胴体部分は、上の広がりに気をとられて広がっていくように思ってしまうのですが、ほぼ、寸胴に立ち上げていきます。左右に付く大型の把手は大小に差があり、中は空洞。この帽子のような、耳のようなものの上に渦巻き文を付けていくのです。

左では、ざっと、模様が入りました。右上の画像のようにつけた把手には、さらに、粘土紐で盛り上げ、周囲には鼻のような突起、把手の下にも2段階の模様というように重量が増していきます。そこで問われるのが胴体部分と、左右の把手とのバランスです。把手が壊れ落ちてしまったり、胴体自体が崩れてしまったりと心配の種は尽きません。それに、これから模様をいかにきれいにしていくかという課題もあります。

完成と思っても、色々目について直したくなります。「縁はもっときれいにしなきゃ」「竹管の線、曲がってる」などなど。気になったら切りがない、仕上げの作業です。

この水煙文深鉢は人気があって、毎年、誰かが作ったり、作ろうかなと思ったりする(挫折あり)土器です。上の画像は2009年のものです。亡くなられた方もいるのですが、たいへん懐かしい画像です。この年は何と、5人のお仲間が水煙文深鉢を作っていて、立派に焼き上げていました。鳳凰三山、甲斐駒をバックにしたこの風景、変わらず美しいです。

さかのぼって制作活動 NO,1

前回は、いきなり、終着駅みたいな野焼き風景を見ていただいたのですが、これから、焼かれた土器の制作過程をさかのぼって見ていただくことにします。

これは、曽利遺跡で出土した「蛇文蒸器形深鉢」と呼ばれているものです。この土器は、粘土紐や半さい竹管で施文された繊細な模様が口縁部についていて、私は「手芸土器」と呼びたいと思っています。

左から順次、上へと形作って行きます(当たり前)底部分の丸み、そのあと、ウエストの様にくびれて、上で広がる。輪積みで立ち上げていく時に、絶妙なタイミングが必要です。

左は粘土紐を捩じって絡めています。這い上がる蛇や縁の模様に使われています。男性の大きな手ですが、繊細な仕事です。完成した土器を見ると、そこここに、努力が垣間見られますね。

結論から 失礼します😁

それでは、時系列で野焼きの進行をご覧ください。

焚火の周りにさらなる乾燥を促すために土器類を並べ、燠を作り広げて、その上に土器類を並べます。けむりで燻し、一番上まで黒く煤けさせる工程です。

土器たちはいよいよ火の中に入ります。顔を出すまで、もう近寄れなくなるくらいのほのおの中に包まれます。800℃くらいになっています。

焼きあがった土器たちです。これを見ると、色々な作品があるものです。土器、土偶、創作土器。お仲間が精魂込めて作ったものたちです。これから、時間をさかのぼって、土器作りの過程やエピソードなどをこのブログで紹介できたらいいなと思ってます。乞う、ご期待👍

最後は、みんな笑顔で記念撮影です。今年も素晴らしい、秋の1日を過ごせました。感謝🤣

2024 制作活動開始

にぎやかに始まった今年度初日のゆとりろ風景です

曽利遺跡29号址出土の台付き深鉢
九兵衛尾根遺跡33号址出土の深鉢
曽利遺跡66号址出土の深鉢
曽利遺跡4号址出土の水煙渦巻文深鉢(レプリカ)
曽利遺跡4号址渦巻文深鉢
曽利遺跡48号址蛇文深鉢

今年度は今のところ、上の4点を考古館からお借りしています。下2点は撮影した画像のプリントで作ったり、仲間が以前作ったものを見て作ったりしています。できれば、お借りして、本物を見ながら作るのが一番ですが、重要文化財である土器をお借りできませんし、また、他施設に貸し出す予定があったりすると無理なので、その時は土器四方八方を撮影させてもらって、プリントしたり、以前、仲間が作ったものを持ってきて参考にしたりします。プリントだけで作っていくのは、平面を立体にしていくので、難しいものです。

お地蔵さん
オリジナルな土器

オリジナル作品に挑戦しているお二人です。どんなものが完成するか楽しみです。

今年度、お仲間は何を作るのかな?何を作ろうかな?と、思いを馳せながら活動初めの2週間が終わりました。今年も楽しみです。

2024活動開始 今年もよろしく😁

緑の濃さが日に日に増す2024年5月14日、今年度ほのおの会の活動が例年のように、井戸尻考古館見学から始まりました。

考古館学芸員の副島氏から、主に土器について、時代を追いながらの変遷や地域性、土器を通じた交流などについてお話を聞きました。また、今年はどれを作りたい、どれを貸していただきたいなど考えながらの見学で2時間近くがあっという間に過ぎて行きました。何度見ても井戸尻の土器は素晴らしく見ごたえのあるものです。

その後は、こんな景色の駐車場に何気なく山積みされている土の山が、私たちの胎土を作るもとになる粘土質の土であるということを見て、触って(*_*)でした。

午後のゆとりろでは、先生に胎土の話や制作時の基礎となる輪積みのお話を聞きました。久しぶりのゆとりろです。

輪積みは胎土をひも状にし積み上げていきますが、大型の土器や埴輪などを作るときは、太く作った胎土の紐を、手でたたいて板状にし積み上げます。接触部分はへらで上に押し上げながら、溝を作っていき、さらにそこに粘土紐を埋め込んで強固にしていくという技法を教えていただきました。

これは、”つぶし”という技法をやっています。土器が、指で押して、ちょっと抵抗があるけどまだ、押せるくらいの乾燥具合の時に右画像下にあるツルツルの石でこすります。土器壁は押されてつぶされていきます。土器は基本鍋釜の用途ですが、どの土器を見ても中はこのような技法を使って、たいへん滑らかに作られています。これは土器の内面に施される技法ですが、表面に磨きをかけ、光らせるような場合は、もう少し乾燥させた状態で、石などでこすります。ピカピカした感じになるこれが”みがき”という技法です。画像奥の方に2点土器がありますが、黒い色は漆を塗っているからです。縄文時代から漆は使われ、井戸尻近辺でも漆を塗った土器が出土しています。アスファルトも使われていたと言われていますし、縄文時代を生きていた人の知恵に感嘆するばかりです。

今年も、ほのおの会の活動に参加してくださる皆さんがどのように土と向き合い、どのような作品を作り上げていくのか、とても楽しみです。もちろん、私も含めてですが。

縄文の見える町 By ほのおの会

前回の「発表の場」でお見せしたように、毎年、お仲間はいろいろなものを制作していますが、土器のレプリカは、本物の縄文土器をお借りしたり、画像を何枚もプリントして、より本物に近づけたいと思いつつ制作しています。そこで、富士見町のいろいろなところにレプリカを飾らせていただき、「星降る中部高地の縄文世界」の一翼を担う富士見町を「縄文の見える町」にしていけたらいいなと思っています。

信濃境駅は文字通り山梨県との境駅で、かつてはドラマの舞台にもなった小さな駅です。ここは井戸尻考古館の最寄り駅で「5000年前まで徒歩15分」というポスターが貼られています。改札を入って左側に設けられたスペースにほのおの会のメンバーが作った考古館収蔵の土器のレプリカが飾られています。

道の駅蔦木宿は国道20号線沿いの山梨県との境にあり、日帰り温泉「つたの湯」が併設されていて、人気になっています。その休憩所に、土器のレプリカを飾らせていただいています。

先日、富士見町地域共生センター「ふらっと」の受付ロビーに水煙渦巻き文深鉢のレプリカを飾らせていただきました。地域の皆さんが「縄文の町」を意識してくださればとの思いがあります。

今年は、ちょっと足を延ばして(?)お隣の小淵沢町にある宿泊施設スパティオ小淵沢のフロントにもメンバー制作の土器、土偶のレプリカを飾りました

どちらも山梨県の鋳物師屋遺跡で出土したものです。円錐形土偶は右手を腰に当てて、左手はおなかの赤ちゃんを撫でるように添えられている、妊婦を現した土偶です。右の人体文様付き有孔鍔付き土器共々、国の重要文化財に指定されているものです。どちらも、大変愛すべき土器土偶でレプリカを作りたいとう気持ちになります。故郷の山梨県に収まってるという感じです。

昨年は、友好都市多摩市のロビーに、富士見町紹介コーナーが設けられた際にメンバーの作った「水煙渦巻き文深鉢」と「始祖女神像土偶」を飾っていただきました。また、多摩市にある富士見町のアンテナショップ「ポンテ」には、土器のレプリカをお貸ししていて、イベント等に合わせて使っていただいているようです

古代遺跡のある町の玄関駅にはよく、土器、埴輪などのオブジェが飾ってあります。そこまで大規模でなくても、駅前だけの限定ではなく、その街に足を踏み入れたら、「どこでも土器を見かけるな→なぜだろう?→そうか、ここは縄文時代の遺跡がたくさん発掘されているいる町なのか」と気付ける「縄文の見える町」ってどうでしょうか?縄文時代に生き、土器石器を作った人々を尊敬し、現代に生きる我々が、発掘によって目にできたものに尊敬の念や称賛の意味を込めて、類似した作品を作る=「オマージュ」したいような、そんな気分です。

発表の場―富士見町文化祭 2023

富士見町文化祭が開催され、ほのおの会も今年制作した、土器、埴輪、オリジナル土器などを展示発表しました。展示は3日から5日までコミュニティープラザ2Fで、5日は芸能音楽祭がグリーンカルチャーセンタで開催されます。ほのおの会の中には、その芸能祭に出場する仲間もいます。どのサークルも1年の成果を、胸を張って発表しています。

ほのおの会の展示風景です。

作品が一堂に並ぶと、仲間がそれぞれ、色々なものを作ったのだなと、あらためて感じます。土器をまねた作品だとしても、そこには個性が感じられるーそんなことも実感する展示です。「一つ一つ、1年1年区切りをつけつつ次へ向かう」来年も頑張ろう。

2023 井戸尻考古館収穫祭

2023年の井戸尻考古館収穫祭は、この快晴の中、盛大にそして、新しい趣向を凝らして行われました。

ほのおの会ブースです。メンバー手作り、ニューフェースの看板が人目を惹きます。人気物のドライなはすの花托や創作土器を並べました、今年はたくさんのオリジナルな土器があり、来場者の方々に、たいへん、好評でした。

”くく舞”です。今年は、太鼓演奏のもと、活動的な縄文踊りになりました。縄文時代にも、お祭りにはこんな、パフォーマンスがあったのではと思わせる、”ノリノリダンス”でした。

来年も、こんなきれいな日に、こんな素晴らしい場所で、こんな素敵な時間が過ごせることを願ってます。

追伸:特別出演

これも、ほのおの会手製の顔出しパネル。左「半人半蛙有孔鍔付土器」右「始祖女神像(坂上土偶)」

野焼き 2023年10月10日

今年も、作品作りの集大成、野焼きを行いました。大きな作品、小さな作品、真似した作品、オリジナルな作品と様々ですが、作った人の精魂込めた作品が一堂に会して、炎の中で焼かれます。そして、縄文時代の幕開けを飾ったように、土としての組成が変わり、水にも負けず、火にも負けず、煮炊きに使えるものに変化するのです。それでは、工程をご覧ください。

太めの廃材を燃やして、燠を作ります。その焚火の周りには、さらなる乾燥を促すよう作品を並べます。この時、炎の近辺に向けた赤外線のセンサーは150℃ほどを示しています。

燠ができたら、広げて土器の置き場を作り、作品を並べます。土器は、煙で黒く煤けていきます。

背の高い埴輪も、上の方まですすで黒くなりました。取り囲むように周りに板を積み重ねて、最終段階への準備をします。

作品の上まで覆うように、板を渡します。あっという間に火の勢いが増しますから、手早く、そして、中の土器に当たらないように細心の注意を払いながらの作業です。この時の炎近辺の温度は500℃以上になります。

炎がおさまり、焼きあがった土器が顔を出しました。みんなきれいに焼きあがっているようです。まだまだ、熱いです。

ギャラリーの方々も、にっこり一緒に記念撮影です。一日の充実感が皆さんの顔に現れています。ちょっと国際的な記念撮影になりました。

一年の集大成、野焼き。天候に恵まれて楽しく終わることができました。今年は、温度センサーを持ってきてくれた仲間がいてこまめに計ってくれていました。そのデータは来年の野焼きに参考にしたいと思います。

追伸:焼いたのは土器だけではない!楽しみにしてるのは土器の焼き  上がりだけではない!

ニジマスの串刺しと、手前の土器でははすの実入り古代米ご飯とお汁ができています。この土器は先生が毎年持ってきて、ご飯やお汁を作ってくれる土器ですが、井戸尻の有孔鍔付き土器のレプリカで、何と、30年以上も前から使っているのだそうです。今日焼いた土器でも、煮炊きができるということですね。盛り付けてある手前右側は、見学してくれていた子の手作りで、リンゴ・ルバーブクラングルです。実はこちらも国際的。疲れた体に、ブラウンシュガーの甘みが最高の癒しでした。ご馳走様でした💛

野焼きに向けてのラストスパート

今年の制作活動は昨日で一応、一段落しました。今まで紹介してきた土器の他にもたくさんの土器が出来上がりました。ぎりぎり、昨日出来上がり、これから家で模様をきれいにしたり、乾燥を進ませたりしてと最終調整に入る土器もあります。これまで紹介してきた土器以外で、どのような作品があるかご紹介します。

雑感:今年はとても暑い夏で(去年も言ってたかな?)体調を壊した仲間も何人かいましたが、それにも負けず、先日は薪の調達、運搬、積み下ろし作業を多くの仲間ででき、何とか来週の野焼きにこぎつけることができました。10日の野焼き、怪我のないように気をつけねば。「足と心をふらつかせず、地に足をしっかりつけて火に向き合います”」私の決意でした。いつも、力を抜いた全力投球を心がけている”ヅク”がない私です。