2024活動開始 今年もよろしく😁

緑の濃さが日に日に増す2024年5月14日、今年度ほのおの会の活動が例年のように、井戸尻考古館見学から始まりました。

考古館学芸員の副島氏から、主に土器について、時代を追いながらの変遷や地域性、土器を通じた交流などについてお話を聞きました。また、今年はどれを作りたい、どれを貸していただきたいなど考えながらの見学で2時間近くがあっという間に過ぎて行きました。何度見ても井戸尻の土器は素晴らしく見ごたえのあるものです。

その後は、こんな景色の駐車場に何気なく山積みされている土の山が、私たちの胎土を作るもとになる粘土質の土であるということを見て、触って(*_*)でした。

午後のゆとりろでは、先生に胎土の話や制作時の基礎となる輪積みのお話を聞きました。久しぶりのゆとりろです。

輪積みは胎土をひも状にし積み上げていきますが、大型の土器や埴輪などを作るときは、太く作った胎土の紐を、手でたたいて板状にし積み上げます。接触部分はへらで上に押し上げながら、溝を作っていき、さらにそこに粘土紐を埋め込んで強固にしていくという技法を教えていただきました。

これは、”つぶし”という技法をやっています。土器が、指で押して、ちょっと抵抗があるけどまだ、押せるくらいの乾燥具合の時に右画像下にあるツルツルの石でこすります。土器壁は押されてつぶされていきます。土器は基本鍋釜の用途ですが、どの土器を見ても中はこのような技法を使って、たいへん滑らかに作られています。これは土器の内面に施される技法ですが、表面に磨きをかけ、光らせるような場合は、もう少し乾燥させた状態で、石などでこすります。ピカピカした感じになるこれが”みがき”という技法です。画像奥の方に2点土器がありますが、黒い色は漆を塗っているからです。縄文時代から漆は使われ、井戸尻近辺でも漆を塗った土器が出土しています。アスファルトも使われていたと言われていますし、縄文時代を生きていた人の知恵に感嘆するばかりです。

今年も、ほのおの会の活動に参加してくださる皆さんがどのように土と向き合い、どのような作品を作り上げていくのか、とても楽しみです。もちろん、私も含めてですが。

縄文の見える町 By ほのおの会

前回の「発表の場」でお見せしたように、毎年、お仲間はいろいろなものを制作していますが、土器のレプリカは、本物の縄文土器をお借りしたり、画像を何枚もプリントして、より本物に近づけたいと思いつつ制作しています。そこで、富士見町のいろいろなところにレプリカを飾らせていただき、「星降る中部高地の縄文世界」の一翼を担う富士見町を「縄文の見える町」にしていけたらいいなと思っています。

信濃境駅は文字通り山梨県との境駅で、かつてはドラマの舞台にもなった小さな駅です。ここは井戸尻考古館の最寄り駅で「5000年前まで徒歩15分」というポスターが貼られています。改札を入って左側に設けられたスペースにほのおの会のメンバーが作った考古館収蔵の土器のレプリカが飾られています。

道の駅蔦木宿は国道20号線沿いの山梨県との境にあり、日帰り温泉「つたの湯」が併設されていて、人気になっています。その休憩所に、土器のレプリカを飾らせていただいています。

先日、富士見町地域共生センター「ふらっと」の受付ロビーに水煙渦巻き文深鉢のレプリカを飾らせていただきました。地域の皆さんが「縄文の町」を意識してくださればとの思いがあります。

今年は、ちょっと足を延ばして(?)お隣の小淵沢町にある宿泊施設スパティオ小淵沢のフロントにもメンバー制作の土器、土偶のレプリカを飾りました

どちらも山梨県の鋳物師屋遺跡で出土したものです。円錐形土偶は右手を腰に当てて、左手はおなかの赤ちゃんを撫でるように添えられている、妊婦を現した土偶です。右の人体文様付き有孔鍔付き土器共々、国の重要文化財に指定されているものです。どちらも、大変愛すべき土器土偶でレプリカを作りたいとう気持ちになります。故郷の山梨県に収まってるという感じです。

昨年は、友好都市多摩市のロビーに、富士見町紹介コーナーが設けられた際にメンバーの作った「水煙渦巻き文深鉢」と「始祖女神像土偶」を飾っていただきました。また、多摩市にある富士見町のアンテナショップ「ポンテ」には、土器のレプリカをお貸ししていて、イベント等に合わせて使っていただいているようです

古代遺跡のある町の玄関駅にはよく、土器、埴輪などのオブジェが飾ってあります。そこまで大規模でなくても、駅前だけの限定ではなく、その街に足を踏み入れたら、「どこでも土器を見かけるな→なぜだろう?→そうか、ここは縄文時代の遺跡がたくさん発掘されているいる町なのか」と気付ける「縄文の見える町」ってどうでしょうか?縄文時代に生き、土器石器を作った人々を尊敬し、現代に生きる我々が、発掘によって目にできたものに尊敬の念や称賛の意味を込めて、類似した作品を作る=「オマージュ」したいような、そんな気分です。

発表の場―富士見町文化祭 2023

富士見町文化祭が開催され、ほのおの会も今年制作した、土器、埴輪、オリジナル土器などを展示発表しました。展示は3日から5日までコミュニティープラザ2Fで、5日は芸能音楽祭がグリーンカルチャーセンタで開催されます。ほのおの会の中には、その芸能祭に出場する仲間もいます。どのサークルも1年の成果を、胸を張って発表しています。

ほのおの会の展示風景です。

作品が一堂に並ぶと、仲間がそれぞれ、色々なものを作ったのだなと、あらためて感じます。土器をまねた作品だとしても、そこには個性が感じられるーそんなことも実感する展示です。「一つ一つ、1年1年区切りをつけつつ次へ向かう」来年も頑張ろう。

2023 井戸尻考古館収穫祭

2023年の井戸尻考古館収穫祭は、この快晴の中、盛大にそして、新しい趣向を凝らして行われました。

ほのおの会ブースです。メンバー手作り、ニューフェースの看板が人目を惹きます。人気物のドライなはすの花托や創作土器を並べました、今年はたくさんのオリジナルな土器があり、来場者の方々に、たいへん、好評でした。

”くく舞”です。今年は、太鼓演奏のもと、活動的な縄文踊りになりました。縄文時代にも、お祭りにはこんな、パフォーマンスがあったのではと思わせる、”ノリノリダンス”でした。

来年も、こんなきれいな日に、こんな素晴らしい場所で、こんな素敵な時間が過ごせることを願ってます。

追伸:特別出演

これも、ほのおの会手製の顔出しパネル。左「半人半蛙有孔鍔付土器」右「始祖女神像(坂上土偶)」

野焼き 2023年10月10日

今年も、作品作りの集大成、野焼きを行いました。大きな作品、小さな作品、真似した作品、オリジナルな作品と様々ですが、作った人の精魂込めた作品が一堂に会して、炎の中で焼かれます。そして、縄文時代の幕開けを飾ったように、土としての組成が変わり、水にも負けず、火にも負けず、煮炊きに使えるものに変化するのです。それでは、工程をご覧ください。

太めの廃材を燃やして、燠を作ります。その焚火の周りには、さらなる乾燥を促すよう作品を並べます。この時、炎の近辺に向けた赤外線のセンサーは150℃ほどを示しています。

燠ができたら、広げて土器の置き場を作り、作品を並べます。土器は、煙で黒く煤けていきます。

背の高い埴輪も、上の方まですすで黒くなりました。取り囲むように周りに板を積み重ねて、最終段階への準備をします。

作品の上まで覆うように、板を渡します。あっという間に火の勢いが増しますから、手早く、そして、中の土器に当たらないように細心の注意を払いながらの作業です。この時の炎近辺の温度は500℃以上になります。

炎がおさまり、焼きあがった土器が顔を出しました。みんなきれいに焼きあがっているようです。まだまだ、熱いです。

ギャラリーの方々も、にっこり一緒に記念撮影です。一日の充実感が皆さんの顔に現れています。ちょっと国際的な記念撮影になりました。

一年の集大成、野焼き。天候に恵まれて楽しく終わることができました。今年は、温度センサーを持ってきてくれた仲間がいてこまめに計ってくれていました。そのデータは来年の野焼きに参考にしたいと思います。

追伸:焼いたのは土器だけではない!楽しみにしてるのは土器の焼き  上がりだけではない!

ニジマスの串刺しと、手前の土器でははすの実入り古代米ご飯とお汁ができています。この土器は先生が毎年持ってきて、ご飯やお汁を作ってくれる土器ですが、井戸尻の有孔鍔付き土器のレプリカで、何と、30年以上も前から使っているのだそうです。今日焼いた土器でも、煮炊きができるということですね。盛り付けてある手前右側は、見学してくれていた子の手作りで、リンゴ・ルバーブクラングルです。実はこちらも国際的。疲れた体に、ブラウンシュガーの甘みが最高の癒しでした。ご馳走様でした💛

野焼きに向けてのラストスパート

今年の制作活動は昨日で一応、一段落しました。今まで紹介してきた土器の他にもたくさんの土器が出来上がりました。ぎりぎり、昨日出来上がり、これから家で模様をきれいにしたり、乾燥を進ませたりしてと最終調整に入る土器もあります。これまで紹介してきた土器以外で、どのような作品があるかご紹介します。

雑感:今年はとても暑い夏で(去年も言ってたかな?)体調を壊した仲間も何人かいましたが、それにも負けず、先日は薪の調達、運搬、積み下ろし作業を多くの仲間ででき、何とか来週の野焼きにこぎつけることができました。10日の野焼き、怪我のないように気をつけねば。「足と心をふらつかせず、地に足をしっかりつけて火に向き合います”」私の決意でした。いつも、力を抜いた全力投球を心がけている”ヅク”がない私です。

土器を作っていくということ その5

今までご紹介したように、井戸尻考古館のものや、日本全国の博物館にある縄文土器をまねて作ることが多いのですが、オリジナルなものを作ることもあります。今回は全くのオリジナルな作品です。しかも、結構、大型な土器。エネルギーに満ち溢れています。ご覧ください。

つぼ型に立ち上げて下には半載竹管の模様が入っています。角も大小二本。どんなふうになっていくのでしょう??

完成したオリジナルな土器。MMさんはこの土器の前に井戸尻考古館の水煙土器を作っていました。渦巻き模様は同じようですが、流れのある模様がついてます。「水流土器」とでも名前を付けたい土器ですね。

おまけ:来年の干支は”龍”

上の作品はSUさんの龍の小物入れ。M先生に手ほどきを受け、ちょっとお化粧してかわいい小物入れの出来上がり。左の龍は、後ろ姿が憂いに富んだ佇まいの癒し系な龍くんです。

土器を作っていくということ その4

今回は井戸尻考古館収蔵の土器ではなく、現在、名古屋市立博物館に展示してある土偶付き深鉢です。「深鉢のふちこさん」ですね。

縄文土器の口縁部に、全身像の土偶が付けられるものである。本資料のような土偶を付けるものは時期と分布範囲が限られ、数は多くないが、縄文前期から 中期の長野・山梨・東京といった中部山岳から関東に集中している。用途はあきらかでないが、祭祀にともなう神人共食の器とみなす説もある。縄文人の精神世界を窺わせる資料である。土偶付深鉢 文化遺産オンライン (nii.ac.jp)

縁の飾りに下の左側のように顔面がついているもの(岡谷市小尾口海戸遺跡)は多いのですが、身体まで表しているのはこの深鉢と、下右(相模原市大日野原遺跡)くらいでしょうか?

それでは、制作過程を見て行きましょう。

完成しましたね。画像では見にくいかも知れないのですが、器面には全面に縄文が施されています。お顔といい、おしりといい、とってもかわいい愛すべき土偶ちゃんです。

おまけ:物入れのふちこさんが言ってます。     「ちょっと何か入れてみて!私がしっかり見張ってるから」

土器を作っていくということ その3

3回目は下の土器です。この土器は底がなく、おそらく、蒸し器形土器の上部だけが残ったのではないかと思われますが、きれいな作りで魅力的な土器です。何回かお借りして、たくさんの仲間が作ったことのある土器です。

尖峰状突起付土器(井戸尻Ⅲ式) 井戸尻遺跡3号住居址出土

井戸尻3号住居址から出土した、井戸尻Ⅲ式土器の標式資料とされている土器セット20点のうちの一点である。四方は三角に尖り、真上から見ると方形をなす。ただし、その一対は欠損している。口縁部は内湾し、方の中に円が存在する。蛇頭と双環がつけられ、その下に太い一本の隆帯が下がり、この隆帯には棒状工具を押し当てて刻みがつけられている。地文は半截竹管でつけられた条線で、口縁部と双環には太いうどん状の粘土紐が貼られている。

作り始めの頃です。3人のお仲間が作っています。

半載竹管(竹を縦半分ほどに割ったもの)で、壁面の筋を入れ、説明文にあるように、縁には粘土紐を列に貼り付けます。

完成間近です。小松館長のお話にもあったように、中もきれいに整えます。手に持っている布のようなものはセーム革で、水を含ませたこの革で撫でて仕上げをします。

完成しました。シンプルな模様ですが、とても丁寧に施されています。先ほど書きましたようにこの土器は下部が見つかっていませんが、この作者は下部をどのように作ったか、知りたいものだと思います。

おまけ:小学生の大胆

完成らしい。ウルトラマンと記念撮影

土器を作っていくということ その2

今回は、考古館からお借りした土器の2点目、3人が作っていた菱形蛙文揚底鉢です。

菱形蛙文揚底鉢(井戸尻Ⅲ式) 井戸尻遺跡3号住居址出土

井戸尻3号住居址から出土した、井戸尻Ⅲ式土器の標式資料とされている土器セット20点のうちの一点である。コロンとした鉢に揚げ底がつけられている。鉢または甕に揚げ底をつけるのはこの時期の土器の特徴。内湾する素文の口縁の下の口径部胴部は、うどんほどの太さの土紐を貼り付けて波線や紐を結んだような文様を描き出し、その後地文に条線をつけている。残念ながら半分ほどが失われている。

この土器の底部分は上げ底なので、粘土紐で輪っかを作ってから始めます。球体に広がっていく部分まできたら、お皿を乗せて底とし、そこから球体状に粘土を積み上げ、縁の部分でくびれを作り、さらに縁部を積み上げて、このかわいらしい形の完成です。

模様を入れていく時に、まず、線を描いていきます。この土器は細い粘土紐で描く模様と沈線とで描かれています。浮き上がった部分と、沈んだ部分で飾られ、縄文は施されていません。

粘土紐で隆線を、竹べらで沈線を描いていきます。粘土紐を張り付けるときは、とれてしまわないように気を付けなくてはなりません。”どべ”と言って、粘土を水でゆるく溶いたものを土器本体と紐につけ、接着剤として貼り付けます。

完成しました。

追伸:19日に恒例のハスのかたく取りをしました。胴長を履いてはす田に入る役、それを受け取る役、整理する役とみんなで分担して、2時間ほどで終了しました。今年は例年になく暑い日で、手早く終ることができて良かったです。

ハスの葉もまだ青々し、咲いている蓮の花もあり、花びらの散った花托もたくさん顔を出していましたから、さぞかし、花の季節はきれいだったでしょう。